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> HF 用ベランダ釣竿アンテナ(詳細)
最近、数名の方々から、私が使用している HF 用のベランダ釣竿アンテナについて、質問を受けました。「(この)ブログに写真が載っていますので、参考にして下さい」とお答えしたのですが、改めて読み直すと、写真が載っているだけで、詳しいことは何もわかりません。そこで、今回は、私のベランダ釣竿アンテナの詳細をご紹介したいと思います。

【現在のシステム】
私のベランダ釣竿アンテナが、現在のスタイルに落ち着くまでは、数回のメジャー、および、マイナー・チェンジがありましたが、まずは、現在の状況からご紹介します。

私は、12階建てマンションの11階(地上高約 30 m)に住んでいます。無線をするためにこのマンションを選び、ベランダにアンテナを設置する許可を得てから契約をしました。マンションの南側(ベランダ側)には、高い建物はなく(写真参照)、アパマン・ハムとしては比較的恵まれた環境だと思います。ただし、北方向は建物の裏側になるため、電波の飛びに不満が残ります。国内では9エリア、DX では EU が苦手な方向です。
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リグは IC-706MKIIG を使用し、ベランダの柵に ICOM 純正のオートマチック・アンテナ・チューナー AH-4 を取り付けています。リグとチューナーは、5 m の同軸ケーブルとコントロール・ケーブル(ともに AH-4 の付属品)で繋いでいます。
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コモンモードによるインターフェアーと回り込みの対策として、教科書(入門書)通りに、同軸ケーブル(5D2V)の両端にフェライト・コア FT-240 #43 材を5回巻、コントロール・ケーブルの両端にフェライト・バーを5回巻にしています。
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ただし、FT-240 #43 材5回巻だけでは、ローバンド(3.5 MHz と 7 MHz)のコモンモード電流を十分に抑えることができません。しかし、私は QRP 運用しかしないため、ローバンドで送信しても同軸ケーブル上のコモンモード電流値は十分低く、自室はもちろん、上下と隣の部屋でもインターフェアは発生していないため、これ以上の対策は行っていません。
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釣竿はグラスファイバー製の安物(1本1000円以下)で、全長 3.6 m(2間竿)4本継ぎの先端部分(穂先)を抜いて(細すぎるため)、手元から3本を使用し、全長 2.7 m です。この釣竿を、写真に示すように、物干し竿かけ(何と呼ぶのが正しい?)に結束バンドで固定しています。教科書的には、カーボン製の釣竿は、電磁波に影響を与えるので好ましくありません。しかし、釣りの世界では、現在は、軽くて使いやすいカーボン製の釣竿が主流になっており、グラスファイバー製の釣竿を探すのに苦労することがあります。グラスファイバー製の釣竿は、釣り道具店の初心者用の安物コーナーに置かれていることが多いので、そこを探してみて下さい。

アンテナ・エレメントは直径 3 mm のビニール被覆線で、全長 12.7 m のロング・ワイヤー・アンテナです(なぜ 12.7 m なのかは後述)。
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アンテナ・エレメントは写真に示すように、釣竿に弛んだ状態で固定しています。釣竿にピタリと沿うように固定すれば見栄えも良いのですが、エレメントの長さを稼ぐために仕方なく弛んだ状態で固定しています。オンエアするときだけ釣竿を伸ばしてアンテナをベランダの外に突き出し、普段は釣竿を縮めてベランダの中に収納しています。
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釣竿アンテナに関する雑誌の記事などでは、アンテナ・エレメントを釣竿に巻きつける例が多く紹介されていますが、私のように、弛んだ状態で固定した場合と、巻きつけた場合と、電波の飛びに差が出るのかどうかはわかりません。ただ、一旦巻きつけてしまうと、釣竿を縮めることが困難になります。しかし、常に釣竿を伸ばしたまま使用する場合は、巻きつけて固定した方が良いでしょう。

次に AH-4 に接続するアースですが、まずは教科書通りに、ベランダの手すりが建物の鉄筋に電気的に接続されているか(アースとして使用可能か否か)を確認しました。その結果、残念ながら、私のマンションでは、ベランダの手すりはアースとして使用できないことがわかりました。そこで、写真に示すように、カウンターポイズとして、アンテナ・エレメントと同じ長さ(12.7 m)のビニール被覆線10本を AH-4 のアース端子に接続し、ベランダ一面になるべく均等になるように広げています。
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そのままでは見栄えが悪いので、普段はカウンターポイズの上に人工芝(100均で購入)を敷いて隠しています。
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一般に、オートマチック・アンテナ・チューナーでは、アンテナ・エレメントの電気的長さが、目的周波数の半波長の整数倍ではチューニングが取れません。私の用いている 12.7 m のエレメントでは特に問題なく、カタログ通り 3.5 MHz 〜 50 MHz まで、きれいにチューニングを取ることができます。(後述するように、計算して製作したわけではなく、単なる偶然です。Hi, Hi)

この釣竿アンテナを設置してから5年半が過ぎました。その間、直射日光と風雨にさらされていたわけですが、意外にも釣竿へのダメージは少ないようです。表面のコーティングが少し剥がれた以外は、ひび割れもありません。これは、オンエアするとき以外はベランダの中に仕舞い込んでいることが良いのかもしれません。しかし、釣竿を固定している結束バンドは、定期的な点検が必要です。アンテナを設置した当初、結束バンドがどのくらいの期間もつのか注意深く観察してみました。初めて結束バンドが1本切れたのは、アンテナ設置から2年以上過ぎてからでしたが、1本切れた後は立て続けに切れ始めました。釣竿の落下事故を防ぐために、現在では、結束バンドは毎年1回交換することにしています。


【現在のシステムに至るまで】
ベランダから HF にオンエアするにあたり、まず私が参考にしたのは、CQ 出版社「アパマン・ハム・ハンドブック」でした。同書には、ベランダ・アンテナの具体例が多く紹介されています。最初に私の目に止まったのは、p112 に紹介されている「ループ・アンテナ」でした。これは、ワイヤーの一端をチューナーのアンテナ端子に、他端をアース端子に接続して、ループ・アンテナを構成するものです。アパマンハム・ハンドブックには、「アースを取る必要がなく、大変使いやすい」と書かれています。そこで、アースのことで悩みたくなかった私は、ベランダから釣竿を2本垂直に伸ばし、ワイヤーを(弛んだ状態ではなく)釣竿に沿って結束バンドで固定し、長方形の1ターン・ループ・アンテナを作成しました。
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このとき、なるべくループの全長が長くなるように、ベランダの両端に釣竿を置いてワイヤーを張ったところ、全長が 12.7 m になりました。これは単なる偶然で、特に意図して 12.7 m とした訳ではありません。現在使用中のアンテナの写真と比較して頂ければおわかりのように、この頃のループ・アンテナは、きれいな長方形になっています。

しかし、このループ・アンテナには、ひとつ問題がありました。アパマン・ハム・ハンドブックには、「一周 10 m あれば 3.5 MHz までチューニングが取れる(あくまで目安として)」と書かれていますが、私の場合は、3.5 MHz ではチューニングを取ることができず、7 MHz 以上でしかオンエアできませんでした。それでも、最初はベランダから HF にオンエアできるようになったことで満足し、ループ・アンテナのまま2年半 HF にオンエアしていました。ところが、次第に 3.5 MHz にもオンエアしたいと思うようになり、アンテナの改良を試みることにしました。ループの周長をもっと長くすることは誰でも考えることですが、ベランダの広さと釣竿の長さを考えると、ワイヤーの延長は現実的ではありませんでした。そこで、JJ1VKL 原岡 OM にご相談したところ、「オートマチック・アンテナ・チューナーでループ・アンテナのチューニングを取るには、最低でも目的周波数の4分の1波長の長さのワイヤーが必要」とのアドバイスを頂きました。よって、3.5 MHz にオンエアするには 20 m 必要になります。ちょうど同じ頃、別件で ICOM のサポート・センターに電話する用事があり、ついでに AH-4 を用いたループ・アンテナについても質問してみました。すると、「AH-4 はアース、または、カウンターポイズを取ることを前提条件として設計されている」、「ループ・アンテナとして使用した場合は動作保障はできない」、「どうしてもループ・アンテナにしたければ、最低でも全長 30 m のワイヤーが必要であり、それ以下では AH-4 に過剰な負担がかかり、故障の原因となる可能性がある」と丁寧に教えてくれました。

そこで、アースが不要なループ・アンテナをあきらめ、ロングワイヤー・アンテナに変更することにしたのです。AH-4 のアース端子に接続されているワイヤーを外し、そのままの長さでアンテナ・エレメントとしたため、私のロングワイヤー・アンテナは全長が 12.7 m となりました。この 12.7 m をすべてベランダの外に出すために、エレメントは釣竿に弛んだ状態で固定し、なおかつ、釣竿は並行ではなく、逆「ハ」の字型にしてベランダの外に突き出すようにしました。ループ・アンテナのときと比較すると、見た目の美しさでは数段劣りますが、他に選択肢はありませんでした。

次に、アースの代わりとなるカウンターポイズを作製しました。CQ 誌などの特集記事には、「数メートルに切りそろえたワイヤーを、5〜10本ベランダの床に広げる」と書かれています。最初は 10 m のビニール被覆線6本を AH-4 のアース端子に接続して、ベランダの床に広げました。各バンドでチューニングが取れるか試してみたところ、3.5 MHz でもきれいにチューニングが取れるようになり、3.5 MHz 〜 50 MHz でオンエアが可能となりました。そのまま何も考えずに使用すれば良いものを、ここで根っからの理系人間である私の悪い癖が出ました(笑)。10 m のワイヤー6本に、5 m を2本、7.5 m を2本追加してみたのです。その理由は、「長さの異なるワイヤーを接続すると、チューニングにどのような影響が出るのか」を実験してみたかったのです。結果は、何の変化も悪影響もなく、単なる時間のムダでした。ならば、実験のために追加した 5 m 2本、7.5 m 2本のワイヤーを外すのが面倒くさくなり(笑)、そのまま1ヶ月ほど使用しました。またもや偶然ですが、別件で ICOM のサポート・センターに電話する用事ができ、ついでに AH-4 に用いるカウンターポイズの長さについて質問してみました。すると、「カウンターポイズのワイヤーの長さは、アンテナ・エレメントの長さと正確に同じ長さにすることを強く勧める」、「それが AH-4 に最も負担をかけない方法である」と言われました。そこで、そのアドバイスを素直に受け入れて、カウンターポイズの10本のビニール被覆線を延長し、すべて 12.7 m にそろえました。結果的に3種類の異なる長さのカウンターポイズを使用したことになりますが、電波の送受信に関しては、どれも実感できるほどの差はありませんでした。


【ループ・アンテナとロングワイヤー・アンテナの比較】
前述のように、3.5 MHz にオンエアするために、ループからロングワイヤーに変更したわけですが、両者には大きな差がありました。

(1)ループ・アンテナの方が雑音が少ない
これは、「ループは雑音に強い」という定説を証明したことになりました。ロングワイヤーにしてからはノイズ・レベルが高くなり、QRPer の私としては、2 way QRP QSO の際に、ノイズと格闘する羽目になりました。

(2)ループは DX 向き、ロングワイヤーは国内向き
ロングワイヤー・アンテナにしてから、国内局が強く入感するようになり、パイルになっていてもピックアップされる確率が高くなりました。私の電波が強く届いていると思われます。これに対し、DX 局はコールしても応答がないことが多くなりました。ループ・アンテナのときに QSO できた DX 局も、ロングワイヤー・アンテナにしてからは、全く気付いてもらえないことも多々ありました。シミュレーション・ソフトで解析してはいませんが、ループ・アンテナは打ち上げ角が低くて DX 向き、ロングワイヤー・アンテナは打ち上げ角が高くて国内向きではないかと推察しています。もちろん、地上高によっては異なる結果となるかもしれません。


【今後の目標】
3.5 MHz にオンエアできるようになってから3年になります。やはり、次の目標は 1.9 MHz でしょうか。コイルを用いてロングワイヤーの電気的長さを延長する方法や、夜間だけ細くて長いワイヤーを目立たないように垂らす方法などが CQ 誌に紹介されていましたが、どちらの方法も、私のベランダで実践するには、何かしら解決しなければならない問題があります。1.9 MHz へのオンエアは、時間に余裕ができたときに、じっくりと検討したいと考えています。


現在の安定したシステムに至るまで、JJ1VKL 原岡 OM には何度も貴重なアドバイスを頂きました。この場を借りて御礼申し上げます。
by jg2gsy | 2009-07-08 21:15 | ベランダ・アンテナ

CW, QRP, Magic Band (50 MHz) が大好きなアパマン・ハムです。BCL も再開しました。
by jg2gsy
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